Wutoをはじめ、私たちの施設の多くは、「滞在型」の旅行スタイルにフォーカスしています。

具体的には、4〜12日くらいの滞在を想定して空間を設計しています。毎日予定を詰め込んで動き回る旅ではなく、旅の中に暮らしの時間がある旅。観光に出る日もあれば、一日ほとんど家で過ごす日もある。そういう時間の流れを前提にすると、空間の作り方は、短期の回転を前提にした民泊とはずいぶん変わってきます。

今回は、私たちが滞在型のために作り込んでいる6つのポイントを紹介します。

① 荷物と収納のバランス、そして面積と人数

滞在が長くなると、スーツケースは頻繁に開け閉めすることになります。私たちのようなズボラな人間なら、広げっぱなしにすることも十分あり得る。だから、荷物を広げるための床の余白は最初から間取りに組み込んでいます。

一方で、扉や引き出しのついた「スッキリ見える収納」は、実は滞在型とは相性が半分です。見た目はきれいに収まるけれど、チェックアウトの日に忘れ物をしやすいし、パッキングのときに「あれどこに入れたっけ」と探し回ることになる。だから私たちは、空間の広さと収納家具の量のバランスをかなり慎重に考えています。しまい込むより、見えていて手が届くこと。

そして、そもそもの面積と人数の話。50㎡ほどの家にベッドを並べて10人泊まれるようにしている施設は少なくありませんが、50㎡で快適に滞在できるのは、私たちの感覚ではせいぜい4人ほどです。私たちは「快適に滞在できる人数」をベースにベッドを配置し、それを超える人数には、エクストラのマットレスを敷いて対応できるようにしています。定員を最大化するのではなく、快適な人数を基準にする。滞在型の設計は、ここから始まります。

② 洗濯は、乾燥機まで

旅行中の洗濯は、地味に大変です。特に子ども連れなら、着替えの量もペースも倍。

だから私たちの施設は、洗濯機だけでなく乾燥機まで揃えることを基本にしています。一日観光して帰ってきて、洗濯物を放り込んでスタートを押す。翌朝には、また着られる状態になっている。干す・取り込むという工程がないだけで、洗濯は「家事」から「ボタンひとつ」になります。

荷物を減らして身軽に旅ができるのも、乾燥機があってこそ。ちなみに私たちは、3日の旅でも3ヶ月の旅でも、服は3セットで済ませています。理屈の上では1着でもいけるはずです。誰か挑戦してみてください。

③ キッチンは「あること」より「使えること」

滞在型の施設にキッチンがあるのは、当たり前です。私たちがこだわっているのは、そのキッチンが本当に使えるかどうか。

まず、調味料を揃えています。塩と油だけのキッチンでは、作れる料理は限られます。基本の調味料が揃っているだけで、スーパーで買った食材が「その日の夕食」になります。

調理器具も、自分たちが暮らせるくらいのものを揃えています。形だけのフライパン1枚ではなく、普段の料理がそのままできる道具立て。

そして電子レンジ。実は滞在中いちばん使われるのは電子レンジです。だからこそ、清掃がしやすく、操作が簡単で、容量の大きいものを選んでいます。多機能である必要はありません。迷わず温められることが大事です。

うれしいのは、チェックインのとき「自炊はしないのでキッチンの案内は不要です」と言っていたゲストが、滞在中に使ってくれていることが多いこと。使える状態のキッチンがそこにあると、旅は自然と暮らしに近づいていくようです。

④ 一日中、家で過ごせること

滞在型のゲストの中には、一日ほとんど家で過ごす方が結構います。読書をしたり、映画を観たり、仕事をしたり、ただのんびりしたり。観光をしない日があるのは、長い旅では自然なことです。

私たちはそういう日のために空間を作っています。家の中で人がいちばん長く過ごす場所――ソファなのかダイニングなのかは家によって違いますが、その「重心」を見極めて、そこにいちばん投資する。一日いても心地よい場所があるかどうかは、滞在型の満足度をほぼ決めます。

また、作業デスクとワークチェアも備えています。1〜2泊の旅行なら仕事のことは忘れてほしいですが、滞在型の旅では、集中して仕事や作業をしたい日もあるはずです。ダイニングテーブルでの「なんとなく仕事」ではなく、ちゃんと座って向かえる机と椅子。ワーケーションという言葉を使うまでもなく、暮らしに仕事の時間があるのは普通のことだからです。

⑤ くつろぎにフォーカスした照明

私たちの照明構成は、くつろぎにフォーカスしています。ペンダント、間接照明、スタンドライト。夜は光を低く、あたたかく。

日本の住宅でよく見る、あの白くて平べったくて丸いシーリングライトは、絶対に使いません。実はあの照明、世界的に見ると日本でだけ普及しているものです。日本で育った人にとってはあれがスタンダードで、それ以外の選択肢を考えたことがない人も多いはず。でも、部屋全体を均一に白く照らす光は、くつろぎの時間には強すぎます。

明るさが必要な作業の時間には、デスクとデスク照明を用意しています。部屋全体を明るくするのではなく、必要な場所にだけ、必要な光を。くつろぎの照明と作業の照明を分けることが、滞在型の光の設計だと考えています。

⑥ 清掃道具もゲストのもの

長い滞在では、毎日の清掃は入りません。そのかわり、掃除機や洗剤、清掃道具を、ゲストの手が届く場所に置いています。

「きれいな部屋を維持してもらう」ためではありません。気になったところを、自分のペースでさっと掃除する――それも暮らしの一部だと考えているからです。食べこぼしをその場で拭けること、髪の毛が気になったら掃除機をかけられること。管理された清潔さではなく、自分の家と同じ清潔さ。それができる道具が揃っていれば、2週間の滞在でも部屋は自分の場所であり続けます。

結び ── 滞在型という旅のスタイル

荷物を広げる余白、乾燥機、調味料の揃ったキッチン、一日過ごせる居場所、くつろぎの光、手の届く清掃道具。ひとつひとつは小さなことですが、全部が揃うと、旅の質感が変わります。

滞在型の旅は、観光の合間の妥協ではなく、それ自体がひとつの旅のスタイルです。4〜12日ほどの滞在先を探すとき、こういう視点で空間を見てみると、選び方が少し変わるかもしれません。