「写真は素敵だったのに、実際に泊まったら2泊が限界だった」
「内装は派手だけど、なんとなく落ち着かない」
Airbnbに泊まったことのある方なら、一度や二度こんな経験があるのではないでしょうか。
私たちユカハンが運営する「Wuto」シリーズは、平均レビュー4.95以上・予約は数ヶ月先まで埋まる形でゲストから支持を得ています。その秘密の半分は運営力。そしてもう半分がインテリア設計です。
この記事では、Wutoがインテリアで何を大切にしているか、なぜJapandiという選択をしているかを、ゲストに届けたい体験という視点からお話しします。
日本のAirbnb、見えない二極化
まず日本のAirbnb市場を俯瞰してみましょう。施設タイプを「日常感 ↔ 非日常感」「ハイグレード ↔ ローグレード」の2軸でマッピングすると、現状は概ね次のように分布しています。
非日常寄り | 日常寄り | |
|---|---|---|
ハイグレード | ラグジュアリーホテル・高級リゾート | ← Wutoのいる場所 |
ローグレード | 和風「風」民泊 | 量産型・低コストAirbnb |
左下の和風「風」民泊――和柄壁紙、提灯、忍者モチーフなどで"ジャパン感"を演出した非日常振り切り型です。短期の観光客や、初めて日本に来る方、日本の文化にまだ触れたことのない方にとっては「いかにもな日本」に見えて魅力的に映るかもしれません。ただし伝統的でもなんでもなく、いわばテーマパーク的な作り込み。実際の日本の暮らしとは大きく乖離した世界で、リピートや「もっと深く日本を知りたい」という体験には繋がりにくいのが実情です。
右下の量産型は、家賃を抑え回転で稼ぐビジネスモデル。家具は最低限で揃え、清潔感はあるけれど特別感はゼロ。写真ではそれなりに見えるものの、実際に触れたり座ったりすると質感が残念だったり、家具が傷んでいることも珍しくありません。冒頭の「写真と違った」「2泊が限界だった」という体験は、多くの場合この量産型に泊まったときに起きています。
さらにもう一つ、和風「風」にも量産型にも共通して日本の民泊で多く見られるのが、"ぎゅう詰め"型のレイアウトです。部屋の端から端までベッドで埋め尽くし、サイドテーブルもなければ身だしなみを整える机や椅子もなく、スーツケースを広げる場所すらない――そんな空間設計。日常生活の空間からは程遠く、Airbnbがもともと掲げていた「ホストの暮らしの一部をゲストとシェアする」というシェアリングエコノミーの理念からも距離のある、利益最大化に特化したレイアウトと言えます。
Wuto自社施設では、この設計は採用していません。一方、運営受託物件の中にはこのタイプも存在します。批判すべきものではなく、オーナー様の運営目的や物件特性に応じた一つの選択肢として、私たちは中立的に対応しています。ただ、Wutoというブランドが目指すゲスト体験とは方向性が異なる、というだけです。
Wutoは右上の「日常 × ハイグレード」――"いい日常"を提供する空間として位置取りしています。
Wutoのコンセプトは「日常だけど非日常、非日常だけど日常」。生活感のある日常ではなく、上質で落ち着ける、カフェのような空間。「派手な非日常」でも「等身大すぎる日常」でもない、その間にあるちょうどいい特別さがWutoの目指す体験です。
なぜJapandiなのか
和と北欧の、驚くほどの相性
Japandi(ジャパンディ)は、日本(Japan)と北欧(Scandinavia)のデザインを融合させたインテリアスタイルです。一見遠い文化に思えますが、両者には核となる価値観の共通点がいくつもあります。
- 無駄を省くシンプルさ(侘び寂び ⇔ ヒュッゲ)
- 自然素材を尊ぶ感性(木・紙・漆 ⇔ 木・羊毛・リネン)
- 機能美への信頼(用の美 ⇔ 機能主義)
- 長く使うものへの愛着(道具を育てる ⇔ サステナビリティ)
日本の住宅にすっと馴染む
北欧家具をそのまま日本の住宅に置くと、スケールや素材感に違和感が出ることがあります。Japandiは日本の住宅環境を前提に組み立てる融合なので、和室にも洋室にも、新築にもリノベ物件にも自然に馴染みます。これが既存物件の活用にも非常に向いている理由です。
長期滞在で真価を発揮する
Wutoは長期滞在を主軸にした運営方針です。1〜2泊なら派手なホテル感覚も楽しめますが、1週間・2週間と滞在が伸びると、人は「視覚的な刺激」より「心理的な落ち着き」を求めるようになります。
Japandiの抑制されたカラーパレット、自然素材の質感、機能的な動線設計は、長期滞在になるほど"ありがたみ"が増す設計思想です。
Wutoの5つのこだわり
① なるべく無垢材を使う
合板や化粧板ではなく、できる限り無垢材を選んでいます。手触り、香り、経年での表情の変化――日常的に触れるものだからこそ、無垢材は空間全体の質を底上げしてくれます。
② 「家時間」が豊かになる照明選び
天井から白い蛍光灯を煌々と――ではなく、ペンダント・間接照明・テーブルランプを組み合わせ、シーンに応じて灯りを変えられる設計にしています。夕方の静かな時間、料理を楽しむ時間、本を読む時間。それぞれにふさわしい光が、滞在の質を確実に変えます。
③ 毎日使って心地いいシーツとタオル
シーツやタオルは、私たち自身が自宅で使っているのと同じものを採用しています。「ホテル用」「Airbnb用」という発想ではなく、「毎日使い続けても心地いいか」を基準に選んだ結果です。
Hello, after returning home I realized how much I miss the bedsheets I slept on during my stay. May I ask what brand they are? I would really appreciate it if you could share. Thank you very much!
(帰宅してから、滞在中に使っていたシーツがとても恋しくなりました。どちらのブランドか教えていただけますか?ぜひ知りたいです。ありがとうございます!)
帰国後にわざわざメッセージをくださったゲストの方からの一言です。こういった声をいただくたびに、日常のこだわりが確かに伝わっていると感じます。
④ 装飾でごまかさず、小物はワンポイントだけ
安価なアートや装飾で空間を埋めることはしません。小物は本当に気に入ったものを厳選し、ワンポイントとして配置するだけ。空間そのものの質を高め、余白を尊ぶ。これがJapandiの本質でもあります。
椅子の座り心地、収納の使いやすさ、掃除動線、素材の耐久性。インテリアは"絵"ではなく"道具"です。長く使えるものを選ぶ姿勢は、結果としてサステナビリティにも繋がります。
⑤ 「ここなら住みたい」と思える水準を死守
すべての判断基準は、最終的にこの一点に集約されます。自分たちが住みたいと思えない部屋を、ゲストに勧めることはしない。 Wutoの全物件は、ユカハン代表自身が「ここに住みたい」と思える水準を超えたものだけをオープンしています。
ブランド選定の裏側
大物木製家具
空間の骨格を作る木製家具は、以下のブランドを軸に選定しています(採用頻度順):
- Re:CENO ── 北欧テイストを日本の暮らしに落とし込んだ家具ブランド。Wutoの基調を作る存在
- 無印良品 ── 普遍的で飽きのこないデザイン。収納・生活雑貨まで幅広く活用
- 高野木工 ── 福岡の老舗家具メーカー。木の素材感と機能性を両立
- IDEE ── デザイン性の高いアイテムを部分的に取り入れて空間にアクセント
- 飛騨産業 ── 100年以上の歴史を持つ岐阜のメーカー。ここぞというピースに
照明
照明は空間の印象を最も左右する要素のひとつ。以下の上位ブランドをメインに採用しています:
- unico ── 北欧テイストとリーズナブルな価格のバランス
- Di Classe ── アート性と機能性を兼ね備えたデザイン照明
- Art Work Studio ── インダストリアル寄りのアクセント照明
ブランドではなく「空間に合うか」で選ぶ
ただし、「全部こだわりブランドでなければダメ」とも考えていません。私たちが大切にしているのは"日常"です。日常で使うものは、価格やブランドの格よりも「本当にいいものか」「この空間に合っているか」が大事。
その基準で選べば、IKEAやニトリにも素晴らしいアイテムはたくさんあります。価格帯の違うブランドをフラットに見て、空間に最適なものを組み合わせる――これがWutoのスタイルです。
中古家具という選択 ── 街に根付くストーリーを紡ぐ
そしてもう一つ大切にしているのが、中古家具の活用です。
Wutoは目先の利益のために作った施設ではありません。数年、10年とその街に根付き、歴史を紡いでいく場所として設計しています。だからこそ、すでに歴史を持っている家具を迎え入れ、これからも長く使い続ける――そんな選び方にこだわっています。
質のいい家具は中古でも全く問題ないどころか、新品にはない経年の味わいが空間に深みを与えてくれる。前のオーナーから受け継いだ椅子が、Wutoでまた誰かの記憶に残る。そういう家具のストーリー性こそ、Japandiの「長く使うものへの愛着」という哲学とも深く響き合います。
「ブランドの格」ではなく「空間に対する適性」と「長く使えるか」で選ぶ。新品にも中古にも、デザインブランドにも生活ブランドにも、それぞれにふさわしい場所があります。
実際にWutoを見学されたオーナー様や同業者の方から、「えっ、この予算でこのインテリアに仕上がるんですか?」と驚かれることも少なくありません。こだわりブランド一辺倒ではなく、適材適所で組み立てる――この発想を持つだけで、コストを抑えながら質の高い空間は十分作れます。
ゲスト体験から逆算するインテリア
最終的に、Wutoがインテリアで目指しているのは、ゲストに「明日も明後日も、ここで暮らしたい」と思っていただくことです。
派手な非日常ではなく、洗練された日常。
派手な高級感ではなく、本物の質感。
「特別な体験」ではなく、「特別に心地いい時間」。
これがJapandiという選択を通じて、Wutoがゲストに届けたい価値です。
次回は、Wutoの空間を支えるもう一つの要素「長期滞在のための設備設計」についてお話しします。1週間以上滞在するゲストが本当に必要としているものは何か――短期前提の発想とは異なる、滞在密度を上げるためのインテリア&設備の考え方をご紹介します。
